≪ 幸 福 ≫

彼女は美しかった

みんなが彼女のことを美しいと言った

でも彼女は美しいことに飽きていた

彼女の足は形よく滑らかで

それはそれは美しかったけれど

石のように動かなかったので

彼女はずっと鳥になりたいと思っていた

ある時

若くてハンサムな青年が彼女のところにやってきた

彼は絵かきだと言った

彼女は彼の目がとてもきれいだったので

「きれいな目ね」と言った

青年は

「私にはあなたの姿を見ることができません。

でもあなたがすてきな方だということはわかります」

とこたえた

 

 

 

 

 

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彼女はびっくりして聞いた

「どうして見えなくて絵が描けるの」

「目が見えなくても絵は描けます。

あなたの声が聞こえるし、感じることができます」

そして彼女に聞いた

「今日の月はどんな色でどんなかたちをしてますか」と

そして彼女に1枚の絵を描いてくれた

彼女が月であり鳥でありそして彼女である絵を

彼女はそれから二度と鳥になりたいと言わなくなった

「今日の月はこんなかたちでこんな色よ」

と言えることが

とても幸福だと思えたから

詩 : 天野恵美子

イラスト: 小林 豊

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